オイディプス

 ついつい、蜷川の「オイディプス王」を観てしまう。野村萬斎麻実れいの超熱演。三谷昇が出てたのも嬉しい。あまり好きではない東儀秀樹の音楽も、この舞台に関してはぴったり。衣装もいい。
 ソフォクレスの凄味も充分に味わえました。避けがたい不条理な運命という名の地獄。2400年前の作品なのに、ここまで普遍性があるのかと舌をまく。
 野村萬斎の軽さ、色悪的な表情が、運命の前の人間の卑小さを強調してて秀逸。麻実れいのふてぶてしいまでの押し出しも吉。
 親子の情、男女の愛、決定論的世界でそれに抗う人間の苦闘を嘲笑うかのように、神の残酷な冗談が総てを押し潰していく。
 正直、泣けて困った。
 「オイディプス王」は映画化もされています。まずパゾリーニの『アポロンの地獄』。30年ほど前の作品で、1年遅れくらいで名画座で観ました。衣装や美術の斬新さに目を奪われました。なんせ若かったので、ケレンばかりに目が行ってました。ほぼ同時期に作られたのが松本俊夫の『薔薇の葬列』。主演はピーターで、映画デビュー作でした。役名はエディ。もちろんオイディプス(エディプス)のもじり。父を殺して母と寝るを裏返し、母を殺して父と寝るというパロディ。原典の悲劇性よりもむしろ70年代の混沌としたアングラ風味溢れる傑作でした。というか当時16・7だったピーターの両性具有的な存在感に悶々。ピーターって、ぼくより一つ二つ年上なんだよね。