神様の湯気

ピグマリオン岡田史子作品集

ピグマリオン岡田史子作品集

  • 岡田史子をデビューからリアルタイムで追いかけられたというのは、思えば幸せな少年時代だったのかもしれません。しかも一番敏感な思春期に出会ってしまったんだからたまんないですね。恐ろしいことに本書に収録された作品は同人誌作品などを除いてほとんど読んでいます。正直な話、この歳で読み直すと「いつの時代にもこういう不思議系の若手作家っているんだな」みたいなシニカルな感想も浮かんでくるのですが、年月を超えてスゴイ部分が大幅にあって、むむーと唸ってしまいました。「死んでしまった手首」の主人公・文市王のダメ人間っぷりがいっそキュートで、後の「ダメさを愛する文化」とも繋がってくるような気さえしましたし(てゆーか岡田史子の描く人物は全員、ダメ人間コンテストに出たら上位入賞間違いなしです)、思春期のぼくがものすごくエロチックな気持ちで読んだ「胸を抱き首をかしげるヘルマプロディトス」は今読んでももやもやしてきます。単なる懐かしさだけではありません。ぼく自身の人格形成において、棘のように刺さっているのが彼女の作品であることを再確認するという感じです。作品以外では書き下ろしの「自分史」が、まあなんとゆーか、いかにもって感じでステキすぎでした。西谷祥子と初めて会った時に里中満智子の悪口で盛り上がったとか、手塚治虫が自分にベレーを取って最敬礼してくれて、頭からたちのぼる湯気が見えたとか、すばらしい天然さでブッちぎってくれます。すげぇや岡田さん。