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イエールジ・コジンスキー『異端の鳥』
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  • こないだ、知り合いの漫画家さんと「地獄文学」の話になり、一番はコレでしょうとオススメしたんですが、調べてみると絶版。ハードカバーが5000円、文庫ですら3000円というとんでもないことになっていたのでした。どんな内容かというと…第二次大戦末期のポーランドを舞台に、都会から田舎に疎開した少年が黒い髪と黒い瞳の持ち主だったばかりに、ナチからも、同胞であるはずの田舎の連中にもユダヤ人かジプシーとみなされて、迫害され、孤独と、餓えと、死の恐怖にさらされながら、放浪するというお話。あえて分類すればホロコースト文学ということになるのでしょうが、反戦、反ナチというよりは、むしろ人間の絶望的な孤独さ、悲惨さを突き詰めることによって「地獄の美しさ」とでもいう他ない地平にまで達しています。ぼくは、この凄絶なまでの美意識に陶酔してしまいました。フラジャリティに対する萌えが激しく発動されると言ってもいいでしょう。その意味では極めて危険な作品で、確か初版が刊行された時、星新一が「絶対子供に読ませてはいけない」と逆説的な誉め方をしていたのも当然でしょう。アゴタ・クリストフの『悪童日記』にシビレた人ならば、間違いなく昇天できます。『異端の鳥』はコジンスキー本人の自伝小説らしいのですが、その後のコジンスキーの人生も波瀾万丈でした。成長し、弱冠24歳でポーランド科学アカデミー教授を勤めた後、自決用の薬をポケットに忍ばせてアメリカに亡命。苦労の末に本書でブレイクし、現代アメリカを代表する作家の一人となり(ジャージー・コジンスキー、イエジー・コジンスキーという日本語表記も見かけます)、長編『予言者』(『庭師 ただそこにいるだけの人』)がハリウッドで映画化(ハル・アシュビー監督作品『チャンス』)されたり、ペン・アメリカン・センター会長に就任したりと、地位も名誉も金も手に入れます(シャロン・テート邸のパーティに間に合わなくて命拾いしたこともあります)。しかし、コジンスキーは『異端の鳥』体験が終生消えぬトラウマとなり、常日頃から「人生なんて死の順番待ちにすぎない。一番幸せだと感じた時に死ぬのが最高だ」と語り、実際に1991年(56歳)にマンハッタンの自宅でビニール袋をかぶって窒息自殺してしまいます。若い人は真似してはいけません。せめてマンハッタンに自宅を構えられるくらいイイ目見てからでないと損ですよ。

竹熊健太郎夏目房之介他『別冊宝島EX マンガの読み方』
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  • 以前、紹介したこちらも宜しくお願いします。

大野安之『That'sイズミコ全6巻』
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  • 復刊交渉予定になっていますが宜しく。大野安之の描く少年が好きな人は嵯峨に注目。

●参照
 

Painted Bird

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チャンス [DVD]

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悪童日記 (Hayakawa Novels)

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悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

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