同年同月生まれ

クラシック極上ノート (単行本)

クラシック極上ノート (単行本)

  • 著者はぼくと同年同月生まれ。この世代、つまり「団塊全共闘世代」と「オタク/新人類」の間に位置する「狭間の世代」にはけっこうヘンな人が多いような気がします。世代論でくくってしまうのは乱暴だし、慎重に考えたいテーマなので、これはまたいずれということにしときますが、「遅れてきた全共闘であると同時に早すぎたオタク」みたいな特有の陰翳があるとだけ書いておきます。さて、渡辺氏もそういう色眼鏡で見ると、ああ、やっぱりという感じがします。この人の文の面白さは熱狂と冷徹、独尊と自己相対化が共存しているところです。だから、辛辣であっても常に自省が働いていて、説得力があります。ぼくも評論を書いている人間の端くれですが、辛口批評と罵詈讒謗は全く別のものだということを判ってない「評論家」がいかに多いことか。渡辺氏はわかっているようです。だから信頼して、ハイドンを聴こうかなとも思うわけです。ブーレーズを切って捨てたり、フジ子・ヘミングの「物語化」にヒトコトあったり、下世話な意味でも読みドコロ充分。おかしかったのはマイスキーの「お色直し」について皮肉を述べているところでした。というのも先日のガラコンサートの放映を先に見ていた妻が「オシャレなチェリストのオジサンが出てたよ」と言ってたんですね。そうか、マイスキー、オシャレなんだ。