巫女と野獣

巫女と野獣

巫女と野獣

 氏賀Y太はビョーキの人というよりはネタの人だと思ってたが、これなんかは典型的にネタ系の一冊。おっとタイトルは「みことやじゅう」ではなく「ふじょとやじゅう」と読む。原タイトルは「デスパンダ」。凶暴凶悪なパンダが突然街中とかアイドルのステージとか動物園とかに出現して女の子も男の子もオッサンもおばさんもいい人も悪い人もオタクもオサレも枯れ草を刈るが如くなぎ倒しブチ殺し叩き潰し引き裂き囓り殺し咬み破り殺し殺し殺しまくる。で、これに立ち向かうのが超能力な巫女一族というオハナシ。一応エロ漫画なので陵辱シーンもあるわけですが、圧倒的なデスパンダの暴力の前には、たかだか人間のやることですから、どうがんばったって敵いませんね。まぁた、ヒロインを襲うレイパー野郎のチンケさがイイ。アイドル・ジャンキーなんだけど、アイドルを助けられなかったヒロインが憎いという狂った動機で、しかもデスパンダにボコにされて弱ってるところを襲うわけだ。だったらオメエがデスパンダに立ち向かえ! とフツウは思うが、このテの輩は保身しか頭にないんですね。だって、そんなことしたらオレが殺されちゃうじゃないですか! つーのがこういう卑劣漢の言い訳だろう。書いててすげぇムカついてきた。いるんだよ、こういうの! 一瞬スイッチが入りそうなりまいた。いや、正確にいうと、こういう卑劣な要素は誰にでもある。あるけれども、多くの人はストッパーがかかっている。誇りといってもいいし、廉恥心といってもいい。それが歯止めをかけている。マッチョな男性原理かもしれんが、オレの美意識としてはアリなんですな。でも、わかる。卑劣漢の魂の叫びってのが理解できる。わかるから余計に許せない。殺していいぞ、デスパンダ。殺せ! 細胞レベルまで分子レベルまで原子レベルまですり潰してしまえ! はぁはぁ。
 鬼畜というよりはスプラッタ好き、それもナンセンスコメディやブラックジョークっぽい味が好きな人にはオススメでしょう。ラストは『いばらの王 (1) (Beam comix)』的。あくまでも「的」ではあるが。