バカのツケを廻す気か?

 「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」最終報告について、昨日の続きである。
 この手の規制推進論にはもはやウンザリとしか言いようがないわけだが、今回の研究会報告のヤバさは、民間の規制反対派による非難ではなく警察庁という「官」のお墨付きがあり、「有識者」のまとめた報告だという権威付けがある点だ。言ってること自体はこれまで繰り返されたヘンテコな理屈なのだが、それこそ社会的影響力という意味ではより大きいだろう。
 例えば、次のような報告はどうか?

2 子どもを性行為等の対象とするコミック等がもたらす弊害



子どもを性行為等の対象とする内容が含まれるコミック等がもたらす弊害については、描かれ方等によって程度の差はあるものの、子どもを性行為等の対象とするコミック等に日常的に接した者が現実世界で次のような影響を受けることが懸念される。

・子どもを性行為等の対象として認識すること

・子どもに対する性行為等は社会的に許容されているものだと肯定的に認識すること

・子どもが性行為等によって喜んでいるなどと認識すること

・子どもに対する性行為等を模倣したくなること

なお、コミック等の中だけの世界の話だという意見もあるが、これらのコミック等を見たことによる影響が指摘された性犯罪の例もあり、このような事例が更に広がっていくことが懸念される。

 こんな形で影響を受けるバカがどれほどいるというつもりだろうか? 性犯罪を犯せば自分の一生が台無しになるという単純な認識さえないバカのツケを「コミック等」に廻されたんではたまらない。
 もちろん、報告ではこの後に「実例」が幾つか挙げられるのだが、根拠は「犯人の自白」だ。「犯人がこう言ってるからこうなのだ」という、冤罪の温床である自白絶対主義がここでも顔を覗かせる。心理学者や精神分析の専門家の検証を経ない「自白」を恣意的にピックアップして例証とされてもなんら説得力を持ち得ないわけで、これはもはや露骨な世論誘導としか考えようがない。
 この報告書がすぐさま法的規制につながるとは思えないが、それ以上に問題なのはこうした論議の実績が、「表現に対して自主規制を強いる」という形での超法規的な公権力介入のアリバイとなっていくことである。
 要するに「有識者の先生方もこうおっしゃってるわけですから」ということだ。

 この件に関しては山口弁護士の日記も参照して欲しい。