傀儡后

傀儡后 (ハヤカワJA)

傀儡后 (ハヤカワJA)

 今頃になって読んだわけだ。かなり面白い。出だしはちょっとやおいっぽい匂いがして、ああ今時の作品だと思ったが、それどころではなかった。見事な変態小説。特にゼンタイやドーラーの皆さんは転げ回りながら読んだと思うぞ。これも今更な話ですがライックラー将軍率いる秘密結社タイトロン*1が「まんま」出てきたのにはひっくり返りましたよ。守口市に小型の彗星が落ちて、近隣が立ち入り禁止の謎ゾーンになっちゃってる近未来が舞台。罹患すると全身がゼリー化する奇病「麗腐病」が流行し、人工無脳搭載のドールが人気を呼び、トランスやら同性愛やらが当たり前で、肌に貼るドラッグ「ネイキッド・スキン」を使うと、世界と自分を隔てる皮膚を境に意識が反転し、街を「読む」異能者があらわれ、超進化した埋め込み型携帯「コミューター」でネットに繋がるコミュたちと、それを狩るゴスに先祖返りしたみたいなゴスロリ風デス・メルたち。テクノ・ゴシックでSFでアイディアもギミックもてんこ盛りで、ベイリーの『カエアンの聖衣 (ハヤカワ文庫 SF 512)』も、クラークの『幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))』が底にあるという大作。