どんどん読むよ

カタリベ (SPコミックス)

カタリベ (SPコミックス)

 ペンの軋みが聞こえてくる。今時、デジタルどころかトーンを一切使わず、線のみで陰影を刻みつけている。いやはやこの描き込みはどうしたことだろうか? 古典的な漫画の見せ場であるモッブ・シーンの惜しげもない投入ぶりはどうだ! 瞠目に値する描き手である。
 この、海洋伝奇時代活劇には、この擬古典主義的描法が最もふさわしい。
 この文化遺伝子の淵源は宮崎駿の漫画版『風の谷のナウシカ』であり、さらに遡上して山川惣治や福島鉄次の絵物語世界にまで辿り着くだろう。
 惜しむらくは、物語が佳境に入ったところで終わっている点である。
 様々な事情はあるのだろうが、この先の高麗侵攻後の物語、女真族との対決を読みたい。