鉱物への誘い
- 作者: 伊藤剛,高橋秀介
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2008/10/02
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 18回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
伊藤剛、高橋秀介両君の共著新刊。
実は、この企画の元になった鉱物本構想については、伊藤くんと知り合った当初から聞いていた。
十年以上前の話である。
これが遅々として実現化せず、聞いてる方としても、「早よ出せやゴルァ」つー感じだった。
詳細は省くが紆余曲折があり、挫折があり、復活があり、十余年の時を経て日の目を見た。
美しい本である。
カバーをはじめとする高橋くん撮影の写真はそれだけでも見る価値がある。
冷徹でクリアでありつつ、時として官能的な姿は、いわゆるブツ撮りの技術だけでは捉え切れないだろう。
これも、「実は」なのだが、これも随分昔、高橋くんには写真と文章の連載を依頼したことがあって、その出来映えには舌を巻いた。
オレ自身は鉱物に関しては素人だ。
もちろん、若い時分に稲垣足穂にイカれた口ですから、浪漫主義的な文系の嗜好としての鉱物好みではある。
ただ、それはイメージであり、イデアであって、現物の鉱物とはかけ離れたものだ。
そんなわけで、ビギナー向けとはいえ、鉱物本を楽しめるか? という危惧があった。
ところが、これが面白い。
水晶という、少なくとも素人でもイメージしやすい石から始まる。
クォーツである。
時計にだって入っている。
しかし、その奥行きと幅には驚かされる。
多くの人々が没入し、賞翫するのも当然だと実感。
さらに方解石である。
こちらは、ありふれた鉱物だし、水晶のように美しいイメージはない。
水晶が貴族なら、方解石は庶民である。
ところが、この本を読むと、その庶民の凄さに感嘆することになる。
とまあ、細かく紹介しはじめるきりがないのでやめておくが、とにかく手に取ってご覧になることをお薦めする。