ストラディヴァリウス

ストラディヴァリウス (アスキー新書 82)

ストラディヴァリウス (アスキー新書 82)

 弦楽器を撮り続けている写真家によるストラディヴァリウスの本。巻頭のカラー図版が見応えあり。ストラディヴァリの簡易な評伝としても、名器たちの故事来歴を知る雑学本としても楽しめる。ストラディヴァリが大成功して富豪になったこと、息子たち以外に弟子を育てなかったことから、相当周囲から嫉視と反発を帯びたこと……なんてのは、ありそうな話だと納得。で、当然、ニスの秘密とかも解かれるんじゃないかと期待する向きもあると思うが、それは結局ナシ。著者は、エイジングが大きいんじゃないかと述べておられる。ここでいうエイジングとは単に完成してから300年ということではなく、製作中の寝かせる時間、ニス塗りの間隔なんかともからんでくる問題。オレとしては後期バロック時代に作られたストラディヴァリウスは、後世に改変されており(中にはさらにバロック様式に戻された楽器もある)、それが音とどう関係するかということを知りたかったが、そこまでは書いていない。これは楽器のオリジナリティ(というかストラディヴァリ自身が想定した音と音楽)ともからんでくる問題だと思う。手軽な新書にそこまで要求すべきではないだろうが。