ボストン美術館浮世絵名品展
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本来の予定では金曜に校了を終えて、午前中に展覧会、午後は取れるかどうかわからない大物の取材。
取材がキャンセルとなったので、妻と出かける。
会場は江戸東京博物館。
言っちゃ悪いが、未来の遺跡めいたバカげた建物ではある。
下駄みたいな構築物で、下駄の歯の間が広大な吹きさらしの空間になってて、壁際に浅草寺の屋根の復元とか、発掘調査で出てきた竈なんかを展示してあるんだが、思いつきで置いてみました感がヒシヒシ。
展覧会の方は超盛況。
なんせ、土用の午後でなおかつ招待券が16日までということもあってラッシュアワーの新宿駅かよという混み具合。
ただ、これくらいの人数だと、流れに乗るといい感じで一点ずつ鑑賞できる。
展示物は明治期に大量に流出した浮世絵の名品ばかり。
画集等でお馴染みの作品が惜しげもなく並んでいる。
オリジナルはイイですよ。
浮世絵、それも春信以降の錦絵は現物が絶対的にイイ。
というのはいかに頑張っても空刷りによるエンボスや雲母刷りのラメ感は印刷では復元できないからだ。
現物(木版)>後刷り(元版による再刷り)>復刻(木版)>原寸大複製(印刷)>原寸大画集>縮小版画集・図録……という差異は明白。
初期浮世絵から幕末期までを網羅的に展示してあり、総花的とはいえ、流行の流れ、美意識の変化、絵師と彫り師と刷り師の表現技術の変遷を概観できる。
特に初期〜北斎あたりは、よほどのコレクターでもない限り、状態のいい現物に触れる機会はない。
どれもこれも目の正月だったわけだが、広重の版下絵をまとめて見られたことと、大好きな國芳を堪能できたことが望外の収穫。
版画という性格上、版下絵は現存しないのが当たり前。今回展示されていたのは、恐らく版下以前の下絵か没にした版下ということだろう。
國芳は、珍しい肉筆と極めて状態のいい「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」に陶酔。