今読んでいる本たち

pecorin9112004-01-17

 そういえば好きな本の話をほとんど書いてこなかったことに気付きました。専門外の音楽の話を書き始めたら楽しくなって、わかんないことを調べたらまたまた面白くなって、ほおおお「○×楽派」ってそういう位置づけなのかぁ、言葉だけ知ってても意味知らなきゃダメじゃんみたいなノリで次々面白いことに走ってしまってたわけです。知らないこと知ってるつもりになってたことを知るのは快楽です。
 さて、小谷真理さんの新刊「エイリアン・ベッドフェロウズ」(松拍社・ISBN: 4775400436)が届きました。まだ拾い読みですが、これがメチャ面白い。

「それまで見たこともないようなものを作ってやる、という勢いだけの決意のもと、日本にぜんぜん紹介されていない英語圏女性SF作家の作品を、日本にぜんぜん紹介されていないフェミニズム理論で斬る、という方法論に挑戦してみることにした」

 と「あとがき」にあるように、凄い勢いとノリのいい文体で、聞いたこともないようなステキな海外SFがバンバン登場するわけです。拾い読みしてると止まらなくなる。フェミニズムって苦手とか、わからんとか思ってる人こそ読むといいと思う。もちろんSFがわからん、苦手って人にも推奨。
 とあるご家庭で奥様がウミガメに変身して風呂場でプカプカしてる間にセッター犬が若い娘に変身し…という変身遍歴譚「カルメン・ドッグ」(キャロル・エムシュウィラー)なんか、うわわわ、読みてぇ! と思っちゃってもう大変。英語力欲しいなあ。それで、今のところワクワクと拾い読みしてるわけですが、書評の対象である本自体の面白さ+小谷さんの面白がり方という二重の面白さのせいで、没入しそうになるのでホント困ります。
 悪い癖が出て、本を一度に数冊並行して読んでます。図書館から借りて読むことが多いので半分くらい読んでダメだと思ったらダメなことにします。数冊の内、勝ち残って最後まで読むのは半分から三分の一。今のところ破竹の勢いで勝ち進んでいるのがチャンドラー・パールの「匂いの帝王」(早川書房ISBN: 4152085363)。天才科学者ルカ・トゥリンが嗅覚の謎に挑戦し、新理論を打ち立てるというノンフィクション。香水の原料を作っている香料の会社は世界に五つしかないとか、有名ブランドの香水を実際に作っているのは有名デザイナーではなくって匿名の調香師だが、デザイナーからくる指示書は「中国の冬に、イタリア産の大理石でつくられた舞踏室で古いロウソクが溶けている匂い」などという詩的なテキストだとか、感心の連続。さて、これまでの嗅覚にかんする定説、つまりなんで人間は匂いを嗅げるのか? 違う匂いを嗅ぎ分けられるのか? という疑問に対する答は匂い分子の形状の差を鼻の中の受容器が判別するという形状説だったわけですね。ところが困ったことに同じ形なのに匂いが違う分子が存在する。ルカ・トゥリンが打ち出したのが分子内の複数の振動が作り出す、いわば「和音」によって判別しているのではないかという振動説。う〜む、分子の奏でる音楽を鼻が聴き取っているわけですね。香道では「香を聞く」とも言うけど、まさにその通りだったのです。振動説が当たってればの話だけど。

匂いの帝王