読んだ本

  • 長辻象平忠臣蔵釣客伝」(講談社
    • 図書館の妖精が「オモシロイヨ」と耳打ちするというのは滅多にありません。あってもほとんどハズレなんだけど、今回は大当たり。日本最古の釣りの本「何羨録」を書いた、旗本・津軽釆女をめぐる異説・忠臣蔵。釆女の妻が吉良上野介の次女で、義理の親子ということになります。吉良サイドから見た忠臣蔵というアイディアは珍しくはありませんが、史実と虚構をないまぜに、幕閣内の暗闘、妖刀村正の祟り、江戸湾に沈む財宝などが次々と立ち現れ、吉良、浅野、津軽が陰謀に巻き込まれていく様を、むしろ淡々と描いています。伝奇風味たっぷりの娯楽時代小説として存分に楽しみました。長辻さんは元産経新聞記者の科学ジャーナリスト。これが初の小説だそうですが、記者経験のある作家は文章力が並じゃないですね。小説はこれ一冊のみですが、他の本も読みたくなりました。