映画「電車男」の失敗を予言?

世界はゴミ箱の中に

世界はゴミ箱の中に

  • 著者は70年生まれ。失礼ながら、聞いたことのない人だったので初出を見たら、主に「江古田文学」に発表した文章を集めたものでした。日芸の人だったのね。ネタは「lain」「電車男」「2ちゃん」「エヴァ」「マトリックス」等々。短くて軽く読める文化論エッセイ集なので、図書館にあれば目を通しても損はないでしょう。本体1714円をスッと出せるかはそれから判断しても遅くはないです。さてさて何故、「電車男」の映画化がダメなのかとうくだりは、実はこないだ映画「電車男」の制作発表があって、「だみだこりゃ」と思った直後なので、思わず吹き出しました。しかし、ぼくは、「電車男」単行本化の話が出た時にも「だみだこりゃ」と思ったものでした。電車男スレに参加する(ROMを含めて)というリアルタイム・ヴァーチャルリアリティ体験を書籍を読むことによって追体験してどうする? と思ったわけです。追体験するならまとめサイトで充分じゃん。ところが売れました。笑っちゃうほど売れました。いや、考えが浅かったです。面目ない。じゃ、何故売れたのかというと、書籍版「電車男」は、普通の意味の書籍じゃなくって、書籍の形をしたまとめサイトであってPCを立ち上げないでも読めるし、ランダムアクセスできちゃうお手軽アーカイブだったワケです。その意味からも映画はダメでしょう。普通はそう考えます。でも、当たっちゃう可能性もないわけではないんですね。それは作者の提案する登場人物の顔が一切見えない映画という「わかってらっしゃる」監督が作るような映画でなくてもいいわけです。それどころか、もっとなんか恥ずかしいくらい古典的に「気弱な青年が仲間達に励まされて恋を成就させる」という構造だけでガンガンいっちゃってプチ感動作品に仕上げちゃって、2ちゃんなんか見たこともない人々が「話題だから」って観に行くというという構図もアリだろうし、制作側はあきらかにソレを狙っているの思うのです。世の中は2ちゃんだけでできてるわけでもなけりゃ、全国民がネット接続環境を享受してるわけでもないですから。蓋は開けてみないとわかんないけど、「ダメを楽しむ」というオタクの作法もあるわけだしね。まあ、そのへんも含めて、青木敬士さんって、言ってることは面白いけど穏当。穏当というか寸止め。「そこまでいうか!? ガッツーン!」という衝撃はなかったですね。そこまで求めるべきじゃないんだろうけどさ。