性悪猿

われらが英雄スクラッフィ (創元推理文庫)

われらが英雄スクラッフィ (創元推理文庫)

  • うまいなぁ。第二次大戦下の英領ジブラルタルを舞台に、愛するサルたちと祖国を守るため、サル係士官である主人公が、謀略戦に巻き込まれていくという長編コメディ。サルたちを愛するあまり、頑張りすぎて主人公は解任されちゃうわけですが、後任士官が無能かつ事なかれ主義者だったためにサルがバタバタと死んで行きます。これを知ったナチが「『ジブラルタルからサルが消える時、イギリス軍もいなくなる』という伝説がもうすぐ本当のことになるだろう」と謀略放送で宣伝します。迷信とはいえ志気に関わる問題だし、ことによってはスペインのフランコ政権がドイツ側に寝返ることになるかもしれません。ところがコトの大事に気付いた時には、サルの群はもはや絶滅寸前で……という展開。最初、ボス猿の性悪さをこれでもかと描くことで読者を引き込み、後はキャラの立った登場人物たちを次々投入し、恋愛沙汰も二つばかりぶちこみ、話をどんどん膨らませていくという娯楽小説のお手本のような秀作です。