ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 2 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 2 (クイーンズコミックス)

  • なんせ今、単行本にかかりっきりなので、後廻し後廻しになっていたんですが、ついつい手を出したら、やっぱり面白いわ。以前、ウチの事務所で伊藤剛さんに漫画レビューを依頼した時期があり、その時に教えられた本なんだよね。伊藤剛さんの薦める漫画はほぼ間違いがない。たまにはぼくと彼の間で、全く評価の分かれる本が出てくることもあって、それはそれで、評価軸の差異がはっきり見えて面白かった。自分の側に引きつけていうと、なんで自分がその作品を否定するのかが明確に見えてくる。余談はさておき、本作は買いでしょう。この作品の恐ろしいところは(まだ二冊しか読んでないけど)、美大生の一見ノンキで平和でオバカで心地よい日常を二組の恋を中心に描きつつ、この楽園がやがては喪われること、そして登場人物達がそのパラダイス・ロストを前倒しして「現在」をすで「想い出」であるかのように見ているところです。ぼくはボンクラな学生時代を送っていたので「ああ、この景色も想い出になるのか」となどと詠嘆したりはしませんでした。若い時って、そういう発想はないんですよ。ところが、これがリアルに感じられて、自分のセンチメント回路に電流が走ったりするわけです。このリアルじゃないのにリアルに感じるのは、作者の中にあるリアルが直球で出てるからです。つまり、ある程度、年齢を重ねた人が、かつて在りしアルカディアの野を再構築しているというのが見える。(以下続く)

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