You are not alone

出家日記―ある「おたく」の生涯

出家日記―ある「おたく」の生涯

 いや、懐かしい。蛭児神建さんとは一回だけ「ヘイ・バディ」の終刊座談会でお会いしたことがあります。異様にテンションの高い人で、暴走、爆笑トークの連続で座をさらってしまいました。その後は年賀状のやりとりを何度かしましたが、その最後の方に「僧侶になった」という近況が書かれていて、「あー、仏教に辿り着いたんだ」と妙に納得したことを憶えています。さて、本書です。本書の読みどころは、初期オタクとロリコン漫画草創期の貴重な証言以上にヒルコさんの内面の修羅に触れた部分です。

 成長するにつれ、変質者に狙われる価値の有る「少女のような美少年」から遠ざかってゆく己の姿に、私は絶望していた。
 自分の、男という性別に違和感を持ちつつも、たとえば女装したとしてもグロテスクな怪物にしかならないという自己認識はあった。
 そう、私は美少女が好きだったのでもなく、美少女を実際に犯したかったわけでもない。
 私は、美少女になりたかった。凌辱され、殺される正当な資格権利を所持した存在である美少女になりたかったのだ。

 ここまで強烈な「想い」までいかなくとも、微妙に共感できる男性が実は少なくないのではないかと思う。

  • -