『水声通信』

 漫画史論テーマの原稿を03-04日の徹夜で書き上げる。
 ずーっと前に更科くんが「正史は存在しない。あるのは複数の『正史』のバトルロイヤルだ」みたいなことをどこかで書いてたことが頭に引っかかっていた。当たり前といえば当たり前の認識なのだが、「正しい歴史認識」とか無神経に言っちゃえる人がウジャウジャいるからなー。「現実の歴史は巨大な複雑系システム」という、ワリとフツウの認識だと思っていることも実は全然フツウじゃないのかもしれない。
 複雑系の中からクラスターや時系列の法則性に近いものを読み取っていくのが歴史記述であって、必然的に歴史観測者の立ち位置や史観によってバイアスがかかるし、恣意性をゼロにすることはできない。つまり複数の視点が存在するんだけど、あまりにも偏向した歴史記述については多数派から補正がかかる。ただ多数派が正しいというわけではない。プレゼンテーション能力を別にすれば単純に数の論理である。数が拮抗していれば論争になるし、少数意見が分立していればバトルロイヤルになる。とはいえ勝ち負けのないゲームである。
 そういうことを考えつつ、あーでもないこーでもないと書きつづっていたら、予想以上に時間がかかってしまった。