クロとマルコ

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 やっと買った。
 表題作はアステロイド・ベルトに住む、お子様、クロとマルコとその周辺のみなさんが繰り広げる、そこはかとなく懐かしい匂いのするSFコメディ連作。半分機械な人とか、恐竜が進化した地球人とか、犬みたいな人とか、マイルドとはいえ掘骨砕三の良き部分が満喫できる。まあ、一般誌で描いても掘骨は掘骨。登場人物の多くが両性具有的だったり、ジェンダーロールがズレてたりする。
 これまでの掘骨らしさという意味では、後半に収録の短編群。
「鼠と竜のゲーム」は言わずと知れたコードウェイナー・スミスからのイタダキなタイトル。竜の血を求める狩人たちと、鼠が苦手な竜と、竜のおこぼれで生きている鼠が戦いを繰り広げる。とはいえ、モンハンという感じではなく、むしろ、ほのぼのとした異形の恋愛譚。
「湖のひみつ」はダムの養鯉場で、大量の「女の子にしか見えない魚」と遭遇するというオハナシ。別にポニョとは関係なさそうだが。女の子がうじゃうじゃとコマを埋め尽くすグロテスク&エロさは通じるとこもある。ホラ噺としてのSF。
「白い竜」は復活した恐竜が家畜として飼われている近未来譚。ドナドナな話(ネタバレか)なんだけど、当事者はセンチメントに流れず、プロフェッショナル。
デサント・ドルガンヌ」は、ネタバレになりそうなので書かない。この本で一番、黒いホラー。
「翼のざわめき」は、コミカルな味のグロテスク・ファンタジー。ここでもうじゃうじゃと同じ顔の女の子たちがコマを埋め尽くす。
 ちなみにカバー裏の四コマは鉈川鉱。ちゃんとタッチが違う。