セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの見解とは?

 以前(財)日本ユニセフ協会の広報室長で現在はセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのシニア・アドヴァイザーである森田明彦東工大特任教授のブログ「自由日記」の7月21日付けエントリに、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの見解が掲載されていた。以下のリンクを参考にされたい。

日本ユニセフ協会「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンに関するセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの見解
http://fwge1820.spaces.live.com/blog/cns!6F2FFD241EC3D7CB!2073.entry

 さて、以下がセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの独自の見解の引用である。

(1)実在の子どもを対象とした子どもポルノの単純所持については、被写体とされたこと自体がすでに実在の子どもの人権侵害であるという事実を考えれば、他人に譲渡したり、販売することを目的とする所持ではないという理由で免責にはなりません。つまり、実在の子どもを被写体にした子どもポルノの単純所持も処罰すべきです[ii]。
(2)実在しない子どもが登場する擬似子どもポルノないし準子どもポルノについては、性犯罪との関係を確認するための科学的調査をただちに始め、その結果を踏まえて、適切な法的規制を検討すべきと考えます。
なお、(実在しない)創作された子どもないし子どもと思われる者を対象として、プレイヤーが性的虐待を行うことができる一部コンピューターゲームは、その内容の悪質性を考えると、社会法益の侵害という観点からも問題にすべきです。
(3)子どもポルノの被害に遭った子どもの保護については、福祉面での支援だけではなく、司法手続きにおける「子どもに優しい手続き」の導入も検討すべきです。
(4)子どもポルノの対象を広げる以上、冤罪を避けるためにも、裁判所制度以外に個人申し立て等の救済制度を同時に整備すべきです。さらに、政府から独立した人権オンブズパースン制度や人権委員会の設置を同時に進めるべきであり、また、国内的救済措置を尽くして依然、冤罪の被疑者の救済が実現しなかった場合に備えて、各国際人権委員会に対する個人通報制度を利用できるように、各人権条約の選択議定書を日本政府は早期に署名・批准すべきです。

 (1)は単純所持処罰化という、いつもの見解。
 (2)は自公案にあった「調査」をもう一回出してきたわけだが、レイプレイあたりを意識して、より踏み込んだ内容。調査研究と言っても、「悪質」で性犯罪との因果関係があって、法的規制すべしという結論先にありきの論。
 (3)は「子どもに優しい手続き」という抽象的な表現では意味不明。司法手続きの過程で二次レイプ的な被害が起きないようにということなのだろうか?
 (4)は冤罪防止についての見解なのだが、冒頭に「子どもポルノの対象を広げる」と明言している。冤罪防止を言うのであれば、恣意的な運用や錯誤、過剰反応をどう防ぐかについての見解を述べないと意味がない。この見解でセーブ・ザ・チルドレンの考える「子どもポルノ」の基準を明確に示すべきだったのではないか?
 以上がオレの感じた疑問点。
 で、いつも感じることなんだけど、「表現規制にまで踏み込むべし」論のほとんどが感情論以上の根拠がないということ。
 上記のセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの見解でも「社会法益の侵害」と言いながらデータを出さないのはアンフェアだと思う。
 特定の「コンピューターゲーム」に問題があるとするならば、具体的に実害性を立証すべきだろう。
 性的虐待が行われる表現がけしからんというのは自由だが、無根拠にそれを法で規制しようという発想には問題がありすぎる。
 言い尽くされた論だが、個人法益に制限をかけるには正当な理由が必要である。
「子供を守るためなら、多少の冤罪の危険性は仕方がない。冤罪が起きたら救済すればいい」
 という緊急避難的な発想もあるだろう。
 だが、足利事件の受刑者が救済されるまでに何年かかっただろうか?
 松本サリン事件で犯人扱いされた人が救済されるまでにどんな被害を受けただろうか?
 もちろん、どんな法律だって、人間が作り、人間が運用しているのだから冤罪がゼロになることはないだろう。
 その時々の社会規範によってブレも起こるだろう。
 しかし、その可能性を極力小さくする努力を放棄してはならないと思うのだ。